美味な料理ができないという理由 | 2014/07/03 04:14 |
投稿者:Ryou | |
元来、美味な料理ができないという理由は、料理する人が鋭敏な味覚の舌をもたないことと、今一つは風情というものの力が、どんなにうまく料理を工夫させるかを知らないからに基因する。この風情とは、美的趣味と風流とが主になって働きかけ、まず見る眼を喜ばせ、次に食べる心を楽しませるのである。 しかし、料理という仕事も至芸の境にまで進み得ると、まことに僅少な材料費、僅少な手間ひまでなんの苦もなく立ちどころに天下の美料理を次から次と生むことができるものである。よく主婦の料理下手を非難するもののあることを耳にするが、一家の主婦に料理の上手を求めようとするほどの者は、まずもって求める者以上に、主婦をしてよい料理体験をなさしめることである。 牡蠣雑炊 こんなものを作ることは、まったくなんでもないことで、誰にでもわけなくできるものである。誤って大そうに考えるようなことがあっては馬鹿を見る。まず普通のお粥を拵える。できたお粥の中に水を切ったかきのむき身を入れ、五分ぐらいたって、火からおろし、せりがあれば微塵に切って振りかければ、それでかき雑炊は完成したわけである。茶碗に取れば、かきのよい香りとせりの香りが、いかにも快い。色調もよい。そのまま塩をふりかけ、かきまぜて食べるのもよく、そば出し汁程度のつゆをかけて食べるのもよい。また、単に醤油をおとして食べてもよい。 | |
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